明治村で「撮り鉄」 その2 (1/3)

　引き続き明治村で撮影した写真です。

　名鉄資本の施設だからか比較的鉄道関係の展示物も多い明治村ですが、中でも特筆されるのは日本における初期の鉄道車両である「陸蒸気」と「京都市電」を動態保存し実際に乗客を乗せて運行している点といえるでしょう。

　写真はカーブをスムーズに曲がれるように塗油(レールに油を塗る)作業をしている職員さん。
　一口に動態保存といっても、いろいろと手間隙がかかります。




・京都市電
　日本初の市内電車として1895(明28)年に開業した京都市電の車両のうち、後年(明治43年から44年)に増備された比較的大型の車両2両が保存されている。

　　
　路線の中間地点である市電京都七条駅付近にて。
　この日のお当番は「弐号」。お正月なので注連飾りが付いている。

　
(左)馬車の名残なのか運転台は吹きさらし。
　基本レイアウトは今日の(ワンハンドル式が普及する前の)電車と同じで、左側が自動車のアクセルに相当するモーターの主幹制御機。車体は国産だが電装品など足回りは輸入品のようで、主幹制御機には「THE ENGLISH ELECTRIC LONDON」と「DICK KERR SYSTEM」の文字が見られた。
　右側がブレーキで、回生ブレーキどころかエアーでもない手巻き式のもの。
(右)走行中はこんな感じ。2軸台車の独特な乗り心地と、営業路線では貴重品になりつつある吊り掛けモーターの走行音が楽しめる。

　
(左)路線両端の折り返し駅では、ボール回し(集電装置の方向転換)が見られる。
(右)市電名古屋駅の先の線路で休んでいた「壱号」


・陸蒸気
　9号と12号の2両の蒸気機関車が動態保存されており、月の前半は12号が後半は9号が運用されるとのことで、この日は12号が動いていた。

　「なごや」駅の人力式(!)転車台にて方向転換中の12号。こちらも正面に注連飾りをつけた可愛らしい姿。

　
　「機回し線」を通して先頭部分へと機関車を付け替える。
　終点に着いた客車列車がもと来た方向へ戻るためには、機関車をそれまでは最後尾だった編成の先頭へ付け替える必要がありこの作業を「機回し」と呼ぶのだが、客車列車が激減した今日の日本の鉄道ではそれ自体が貴重な風景といえるのかも?


(左)客車と機関車を連結する。
　連結器も開業当時のネジ式(チェイン式/螺旋連結器)のもの。
(中)車単部左右に付いている緩衝器(バッファ)同士が接触した状態で車両を停止させ、一方の車両(この場合は機関車側)に付いているリングを相手側車両(この場合は客車)のフックにかけ、リング中央部にあるネジ(締結機構)を締める。
(右)客車側に付いているチェーンを機関車側のフックにかける。
…と、書いているだけでも面倒な作業なので(^｡^;)、大正年間に今日でも使用されている自動連結器へ一斉に交換する「自連替え」が実施されている。
(12号機関車の連結器も当然自連に交換されていたが、明治村入りするにあたって淡路交通より寄贈を受けたネジ式連結器により「復元」されている)


(左)組成完了
(中)12号機関車の銘盤(たぶん複製)
　英国のシャープ・スチュアート社製の1Bタンク機で、日本初の鉄道である新橋-横浜間にて使用する機関車の増備車として、同区間の開業2年後である1874(明7)年に輸入されたもの(当時の番号は「23」)。
　その後尾西鉄道へ払い下げられ、同社が名鉄に合併された後も昭和32年まで使用されていたそう。
(右)客車も明治41年及び44年に製造されたもの(ともに国産)

　
　「とうきゃう」駅での機回し作業は、駅横の売店の先にあるスペースより見学できる。

　
(左)転車台の先にある小さな機関庫内には、もう一両の機関車である「9号」が休んでいた。
　この機関車は1912(明45)年に富士身延鉄道3号機として輸入されたC型タンク機で米国ボールドウィン社製。後に日本鋼管鶴見製鉄所へ譲渡され9号機として使用された。
(右)転車台を俯瞰する。
　傍らには給炭及び給水用の施設がある。