いちご電車とおもちゃ電車 (和歌山電鐵貴志川線その2 1/3・6撮影)

　和歌山電鐵貴志川線レポート第二弾は、同線に所在する2本のリニューアル車両「いちご電車」と「おもちゃ電車」の写真です。





　和歌山電鐵が貴志川線の運営を引き継ぐに当たって、それまで同線で使用されていた2270系電車2両編成6本の無償譲渡を南海より受け、現在そのうちの2編成がそれぞれ「いちご電車」及び「おもちゃ電車」としてリニューアル改造を受けている。
　「いちご電車」はリニューアル車第一弾として2006年8月に登場したもので、終点の貴志駅付近の特産品がいちごであることに因む。


　和歌山駅に停車中の「いちご電車」。
　リニューアルのデザインはJR九州や和歌山電鐵の親会社である岡山電気軌道の車両デザインを手がけている水戸岡鋭治氏によるもの。(水戸岡氏は岡山出身)


　
　派手な色使いとレタリングの多用が氏のデザインの特徴。

　
　車内はこんな感じ。内装には木材が多用され、電球色の蛍光灯を使用することとあいまって柔らかい雰囲気を作り出している。
(右)日よけのカーテン及びつり革の握り部分も木材を使用したものに取り替えられていた。
　シートのモケットはいちご柄のものに変更し、シートの境目には肘掛を新設。

　
(左)連結部付近にはイベント運転時を考慮してカウンターが設置されている。
(右)貫通路上部にはオリジナルの暖簾がかかる。
　その上部及び側面には「いちご電車」改造に当たって寄付を寄せた個人や団体の名前が記されたプレートが取り付けられている。
　「いちご電車」の改造には、2500件を越える個人や団体等から1100万円近い寄付が集まったそう。

　この車両の来歴を示す銘板が車内に貼られていた。

　この車両は南海高野線の山岳区間直通列車(通称大運転)用車両である20000系「ズームカー」(※1)の増結用車両22000系として1972年に製造された(一番上)。
　流線型だった20000系「ズームカー」に対し、通常の角ばった車体を採用したため「角ズーム」と呼ばれたり、オールロングシートで両引き戸を採用した事から「通勤ズーム」等と呼ばれた。

　以来高野線大運転列車などに使用されてきたが、1994年に新型車両の配備に伴い「山」を降りて旧型車が残っていた支線用に転用される事に(上から2番目)。
　南海線や高野線の支線区用に改造された仲間(※2)がワンマン運転用機器の設置など小規模の改造に留まっているのに対し、貴志川線に転用され2270系を名乗るグループは、ワンマン機器設置の他、ワンマン時の料金収受を容易にするための乗務員室直後への客用扉の移設及び一枚扉化や、正面貫通路を廃止し悲貫通化する等の改造を受け、外観が変化している。

　そして和歌山電鐵へ路線委譲が為された2006年に、リニューアル車第一弾として「いちご電車」へと改造された。

※1:カメラのズームレンズのように平坦区間でも山岳(勾配)区間でも万能に使える車両を目指した事からついた愛称。
※2:2200系及び2230系。また2両編成1本が熊本電鉄へと譲渡されている。



　ここからは、リニューアル車第二弾として2007年に登場した「おもちゃ電車」、通称「OMODEN(おもでん)」の写真を。
　和歌山県海南市に所在する玩具やプラモデルの通販会社T.J GrosNetがスポンサーになって改造された。
(右)和歌山駅に停車中の「おもちゃ電車」。
　赤いとは聞いていましたが実際に目の当たりにすると想像以上に赤かったです。これなら通常の3倍のスピードが出そう?


　「いちご電車」同様水戸岡氏のデザインなので、車体内外に各種レタリングがちりばめられている。


　車内はこんな感じ、床などに木材が多用されている点は「いちご電車」と同様。スタンションポールが追加されている。
　色んなタイプのシートが作られている。(他のお客さんが居て写真は撮れなかったですが)ベビーサークルになっている部分も有った。


(左)遮光カーテンは「いちご電車」同様木材を使用したものと、布製でストライプ模様ガは行ったオリジナルの物とが併用されていた。
(右)握りの部分に木材を使用したつり革。


(左)貫通路上部の暖簾と飾り。
(右)車内にはガチャガチャも有る。
　そのうちの一つは車内限定のデザインの物も含めたわかやま電鉄の缶バッジが売られていた。


(左)連結部分車端部には、各種おもちゃが展示してあった。
(右)その中にはガンプラも置かれてあった。
　この「おもちゃ電車」、当初は「ガンダム電車」とする計画も有ったそうで、赤い塗装はその名残…???


　和歌山電鐵では、4本の編成を「リニューアル車」とする計画だそうで、その他のリニューアル編成の登場が今から楽しみです。
　「いちご電車」および「おもちゃ電車」の運行予定日及び時刻は和歌山電鐵HPにて確認できます。



・余談
　和歌山電鐵の親会社である岡山電気軌道は、一時岐阜の路面電車存続支援(経営引き受け)に名乗りを上げていましたが、地元自治体の反応は鈍く(と言うか冷たく)岡山電軌の支援は実現しないまま岐阜の路面電車が廃止されたのは皆さんご存知のとうり。
　もし、岡山電軌の支援が実現していたらば、こんな感じのユニークな電車が岐阜の街を走っていたかもしれませんね。…└(´Д`)┘